夕方らせん


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空の葡萄と洋梨
  夢をみた。私は、大勢の人に囲まれて歩いている。どこか、知らぬ土地の歩道。空の色も、風景もどこか白っぽくて、映画の回想場面のようだった。私の二メートル前方には、友人S。彼は、グループの先頭で歩いている。前をしっかり向いて、足早に歩く。私は、彼の背中を見ながら歩く。
 だけど、私の関心はSから離れて、空にぶら下がる葡萄に移った。葡萄は、空になっていた。電線に絡まっているように見えるけれど、どこにも電線はない。だから、葡萄は空に、連なるようになっている。私は、青葡萄(白葡萄のこと)と普通の葡萄が交互になっているのが気になって仕方なかった。だって、空に葡萄だもの。私にはそれが面白くて、面白くて、Sを呼び止めた。
 彼に、空の葡萄の話をした。彼は空を見上げた。でも、彼は驚いたようにきょとんとしている。
―どうしたの?と聞くと、彼は私に、なんでそんなことが気になるのか?
と聞いた。今度は私がぽかんとした。だって、空に葡萄がなっているというのに、どうして驚かないのって。でも、私は笑った。
―観察するのが好きだから。どんな小さなことでも面白いんだよ。
と彼に話した。
 彼はまた、私の前にいた。お腹が減っているらしい。彼は、さっき誰かに彼の梨をあげたらしい。それで、お腹が減ってイライラしているというわけ。
―なんで梨をあげてしまったの?と私。
彼は答えない。だから、私は、私が持っていた梨を彼に差し出した。でも、彼はちらっと目を向けただけで、それを受け取ろうとはしなかった。あげる、と言うと、今度は彼が言った。
―それは君のだ。
結局、彼は私の梨をもらってはくれなかった。

 そこで、私は思い出した。この道の先には、洋梨がたくさんなっているって。知らない町だったのに、私はその町のことをよく知っていた。その先に洋梨がたくさんなってることだって、どんなふうになってるかだって、私は知っていたのだから。彼は、またきょとんとして聞いた。
―なんで知ってるの?
私は笑って言う。
―知らない。
 くだんの道にたどり着くと、私の言っていた通り、洋梨がたくさんなっているのが見えてきた。道の脇に、洋梨、ヨウナシ、ようなし。思った通りの形、色。私は満足な気持ちでいっぱいになって、洋梨を眺めたりしていた。でも、歩かなくちゃ。だから、道の脇になっているいくつもの洋梨を、どんどん、どんどん、追い抜いて歩いていく。そうだ、Sに言わなくちゃ。洋梨、やっぱりあったでしょ、って、と思った。でも、どこを探してもSはいなかった。

 私たちは、牧場に向かっていた。私は一度間違えて危険な道を左折して、でもやっぱり右折し直した。すると、そこはもう牧場。薄暗い雲のしたで、淡い色した草を眺めた。積まれたブロック塀だとか、ただっぴろい牧草地だとか、私はぼんやり眺めた。
 振り返ると、お城。フランス様式のお城がたっている。いつのまに?と思う。だけど、気にしない。私と、大勢の人々はお城に入っていく。トイレに行きたいとある人が言った。たしかに、トイレには行きたい。と私も思った。私はトイレ組を引き連れて歩いていった。
 お城の中には、たくさんの螺旋階段。トイレに向かう階段は螺旋状ではない。でも、どこかゆったりとした曲線を描いていて、波打っているようにうねうねとしている。お城の塔を囲むように、うねうねと。階段の途中には、真ん中に分ける仕切りがあった。私は左へ、数人は右へと進んだ。そして、トイレの目の前まできたとき、左を選んだ人には上に進む矢印が。私は、戸惑いながらも矢印に従った。
 上の階につくと、そこはどこかのレストラン。でも、私の目的はトイレ。トイレを探すと、誰もいないトイレがあった。トイレの入り口には、「天空の城」と書かれてあった。鼻で笑いながら、トイレに入った。
 出ると。そこには家族連れ。背の高いお父さんが、子供たちの世話をしている。トイレから出てしばらくしたとき、手に持っていたものをトイレの中に忘れたことに気づいた。でも、とりに戻る気にはならなかった。だから、それをおいて、階段をおりていった。

 城の中は、入り組んでいる。そこかしこに階段があって、迷路のような作り。私はしばらくうねうねと歩いた。途中、階段に沿うように廊下がある場所に出た。私は、階段を上りきらずに、顔だけ廊下の脇から出して、歩く人々を眺めていた。
 そこへ、見知った顔が通りかかる。Sだ。彼は颯爽と歩く。そして、私はみる。彼の手に、さきほどの洋梨がきちんと握られているのを。彼が通り過ぎる。その洋梨にかぶりつきながら、彼はいってしまう。私の脳裏には、歯形のついた洋梨が、ずっとずっと映っていた。洋梨は、やっぱりとてもおいしそうだった。


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